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ゴア

かつて、ヒッピーの聖地と呼ばれたゴア。
海外から多数の観光客が訪れる、インドでも有数のビーチリゾート地である。
レイブと呼ばれるパーティーが毎夜いたるところで開催されており、このレイブ目当てにゴアを訪問する人も多いようだ。
また酒が免税となっているので、他州から酒好きのインド人が集まってくる。

私がゴアに来た目的。それは・・・
ビーチで寝そべり、水着姿の女性を見て鼻の下を伸ばすため・・・ではない。

私がゴアに来た目的。それは・・・
安いビールを昼間から飲んで上機嫌になるため・・・ではない。

私がゴアに来た目的は、あくまでも料理である。
インドでは禁忌とされる牛や豚の肉を使った料理、ビネガーを使った調理法。
ゴアは植民地時代にイギリスではなく、ポルトガルの統治下に置かれ、その影響が料理にも現れているのである。
私は、インドの中でも際立って個性的なゴア料理を一度本場で食べて見たい、と日本にいる頃から思っていたのだ。

しかし・・・
私が食事をしていたのは、地元の若者で混み合うファーストフード店の中であった!
インドの滞在が1週間を過ぎてくると、そろそろ香辛料の効いた料理以外のものを食べたくなってくる。
日本にいる頃には、めったに口にしないハンバーガー。
チキンナゲット。フライドポテト。コーラ。付属品のケチャップの下品な味。
異国の地で食べると何故か懐かしく感じられ、美味しいこと、美味しいこと。
2日連続でゴアでの昼飯は、ハンバーガーなのであった。

夕食はさすがに郷土料理を食べに行った。
ポークビンダルーといった日本でも知られた豚肉カレーや、エビやイカを使った海鮮料理を食べた。
どこのレストランに行っても、シャクティというカレーがオススメになっていた。
日本では聞いたことのない名前だった。
こちらの名物なのだろうか?
気になったので注文し食べてみたところ、今まで食べたことのない形容のし難い味。
しかも抜群に美味しく、私は衝撃を受けた。
日本で知られていないだけで、まだインドには無数の美味しい料理が存在するのだ、と実感できた。
これらの料理はスパイシーでとても辛いのだが、暑い気温の中でビールを飲みながら食べていると辛さも気にならなくなってくるのが不思議だ。

また食堂やレストランで提供されているカレー定食に発見があった。
ステンレス製の大皿の上にはたくさんの小皿が置かれ、中には色々な味付けのカレー料理が入っている。
南インドでは「ミールス」と呼ばれるもので菜食料理がメインなのだが、ここゴアでは「ターリー」と表示されており、具材に魚料理や肉が入っていた。
確かにゴアのカレーにはココナッツミルクやカレーリーフ(ハーブの一種・南インド料理で多用する)が使われており、南インド料理と共通する部分を感じるのだが、スパイスの使い方や素材が菜食にこだわらない点は、はっきり区別できそうだ。
やはり現地に来て、初めてわかることがある。


アンジュナビーチ・オールドゴア・州都パナジと滞在したあと、私はゴア南部の都市マルガオに向かった。
次の目的地は南インド・タミルナドゥ州の州都チェンナイと決めていた。
マルガオ発で、チェンナイへ直行する鉄道列車があるのだ。

マルガオは交通の要所ではあるが典型的な地方都市といった趣きで、観光客らしい欧米人を全くみかけない。
宿を決めた後で散策していると掘っ立て小屋が目に止まった。
BOOKSの看板があり、興味本位で中に入ってみた。
店内にはかなり良質の料理本が並べられており、私は大興奮。


料理本は現地でしか買えないものがあるので、本の内容と著者のプロフィールをチェックして大量購入する。
ゴア出身の著者が、ゴア料理の本を書いている。
当たり前のことだが、大切なことだ。
そして計量の数値(現地の料理本は、ざっくりした表示が多い)が明確で、調理の経過が詳しく説明されている本は、再現の成功率が高くなる。
なお、ここで買った料理本は、現在私がゴア料理を作る上で大いに参考にさせてもらっている。

やがて旅行代理店をみつけ、ふらりと中に入った。
「翌日発のチェンナイ行き。エアコン付き2等寝台を予約してください」
私は受付の女性に告げた。
外国人に接客するのは初めてだったのだろうか。
ずいぶん女性は慌てていたようだった。
すぐ手続きが済むと思っていたが、結局30分以上待たされチケットを購入した。

宿への帰り道に、パンジムで食べたのと同じファーストフード店があるのを発見する。
チェーン店だったのか。
店の前で逡巡する。
「あれ、美味しかったよなあ・・・」
私はまたしてもハンバーガーにパクつくのであった。



 

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