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3月7日

 

40日の旅程を終え、日本への帰路に着くことになった。

空港での搭乗手続きも滞りなく終わり、フライトの遅延はないとの情報。

ここまで順調である。

 

乗り込んだスリランカ航空の機内で、面白い出会いがあった。

私の隣に座った男はパキスタン国籍で、日本で働くパキスタン料理のシェフだったのだ。

スリランカ航空はコロンボを中継地として、パキスタンにも路線がたくさんある。

だからスリランカ人以外に、パキスタン人がたくさん乗ってくる。

 

彼の日本語はペラペラ。

「私も料理人で北海道でカレー屋やってます」と彼に言うと「ホントに?」と驚いていた。

彼は入国カードの書き方を教えてほしい、と私に話かけてきた。

書いてある内容が理解できないのかと思ったが、詳しく話を聞くと自由に読み書きができないようなのである。

私が代筆してあげたら、彼はとても喜んでくれた。

 

飛行機の離陸後に機内サービスが始まり、乗客に食事と飲み物が配られ始める。

私はビールをオーダーした。

「アサヒ スーパードライ」

久しぶりの日本のビールにテンションが上がる。

おや?

隣のパキスタンの彼も、スーパードライをオーダーした。

私はあっという間にビールを飲み干し、キャビンアテンダントにビールを追加オーダーする。

隣を見ると、彼は上機嫌で赤ワインを追加でオーダーしている。

 

どうも彼はムスリム(イスラム教徒)のように見えるが、飲酒は問題ないのか?

疑問に思ったので、ズバリ本人に聞いてみた。

 

「この機内では周りにムスリムがいないようだ。誰も私の飲酒を見ていないから、問題はないのです」

「えーーー!そういうものなのですか!?」驚く私。

ムスリムにも戒律を厳格に守る人もいるし、彼のように柔軟に解釈する人もいる。

あくまでも個人差があるということか。

 

「誰も見ていないからOK・・・でもね、私は思うのです。あなたの神さま、アッラーは飲酒するあなたのことを見ているんじゃないのかな?」

軽い冗談のつもりで、でも鋭いツッコミを彼に入れてみた。

 

「・・・・・・アッラーも見ていない、問題ないね」

はっきりと断言した。

しかし彼は私からの視線を逸らしていたのだ!

 

 

 

 

ほぼ定刻通りに飛行機は成田空港に到着した。

入国手続きを終えた私がまずやること・・・・

麺料理を食べたくてしょうがない。

ラーメン、そば、うどん。

汁気のある麺料理を、なんでもいいから無性に食べたい。

 

このあと国内線を乗り継いで北海道に戻らなければいけない。

地元に戻って食べればいいじゃないか、と理性では思う。

しかし・・・それまで待てない、我慢できない。

それにしても3年前の帰国時は、ここまで食のホームシックにかかった記憶がない。

 

 

私は空港内で一番最初に目に入ったうどん屋に入った。

オーダーは天ぷらうどんだ。

だしの香り。

ネギのシャリ感、さくさくの天ぷらの食感も最高。

つるつる麺の、のど越し感もたまらない。

ズズーーーーー

ズズズーーーー

 

「ふーーーーっ」

美味いな・・・至福の時間。

あれ?

確か私は・・・カレーの勉強をしにインドまで行ったはずだが・・・

カレーの事は完全に脳裏から消えていた。

​機内にて

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