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コロンボ

私が次に向かった国はスリランカ。

今回の旅の最大の目的が、ここスリランカの一般家庭でホームステイをしながら、現地の料理を習得することだった。

 

私はカレー店開業前の2013年にスリランカを旅し、運よくチキンカレーの作り方を習うことができた。

帰国後にそのレシピを基にして作ったカレーは、カレー店開業後にリピートのお客様がつくことを実感した。

私は本格的にスリランカ料理を勉強しなければいけない、と思うようになっていた。

開業して1年半で店が軌道に乗る前であったが、早急に行動すべきと感じた。

 

私はインターネットで検索し、スリランカ在住の日本人が経営する旅行代理店がヒッカドゥワというリゾート地にあることを知った。

その旅行代理店がホームステイの斡旋等もしているようなので、住み込みで家庭料理を習うことが可能だろうか、とホームページにメールを送った。

すると、できます、との回答が返ってきた。

その後に何度かメールで打ち合わせをして、航空機やビザの手配を決めて日時を確定させ正式な依頼をした。

このような経緯で、5泊6日のホームステイで料理を習うことが決まった。

 

それにしても、である。

40歳を越えた外国人のおっさんが、6日間スリランカの一般家庭におしかけて、現地の料理を習うという予定なのだが・・・

私はホストファミリー達と上手くやっていけるのか、正直不安だった。

 

 

 

 

南インドからスリランカまでは空路で移動し、コロンボ市内にある駅前の安宿で一泊。

翌日。

AM6:50発のヒッカドゥワ行きの列車に乗るため、早起きして鉄道駅フォートに向かった。

 

早朝にもかかわらず、駅の構内は人で溢れていた。

日本の駅のように運航案内の電光掲示板はないし、アナウンスもない。

駅員に列車の到着レーンを確認したが私は不安が解消されず、近くにいた男に「ヒッカドゥワ行き、ここでいいの?」と確認した。

「大丈夫。ここでOKだよ」

「そうですか、ありがとう」

 

やがて列車が到着し、中に乗り込む。

向かい合わせの4人掛け座席のうち、一つを自分用として確保して一安心。

列車が動き出すと、先ほどの男が私の前に現れて「君に話があるんだ。あとで迎えに来るから私のところにきてほしい」と言って去っていった。

 

どういうことだ?

向かいの席に座る学生風の若い男性が、男が去ったあと私に言った。

「あなたは、あの男について行ってはダメだ」

「どうして?」

「あの男は悪い奴です」

「・・・わかったよ」

 

10分後に男が再び現れて「一緒に行こう」と言うが、私は「行かない」とキッパリ断ると無理強いすることなく去っていった。

一体何が目的だったんだろうか。

よく事情がわからないが、未然に危険を回避できたようである。

若者に「ありがとう、君のおかげで助かった」とお礼を言ったら、彼はうなずいて微笑した。

 

もし日本で同じような状況が起きていたら、周囲の人は助け船を出してきただろうか?

スリランカ人は親切だな、この若者は勇気があるな、と感心するのであった。

 

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