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インド再び

 

2012年10月22日

Trivandrum, Kerala, India

 

 

 

 「インドは呼ばれた者しか行くことができない」

 あまりにも有名な言葉である。

 

 自分の意思なのか。

 それとも私はインドの神々から、再度呼ばれたのだろうか。

 一度来ているとはいえ、13年振りの訪問である。

 海外旅行自体、8年振りだった。

 

 今回の旅行先は南インドだ。

 前回の印象では、人が穏やかで旅行がしやすい土地という印象が残っていた。

 しかし空港に降りた途端、その思いはあっさりと打ち砕かれる。

 

 おびただしい群集。

 どこを見回しても、人だらけである。

 うるさいリキシャーの客引き。

 喜捨を求める乞食。

 けたたましい車のクラクション。

 野良牛。

 人と車と音の洪水に、ただ圧倒される。

 

 この混沌とした熱気。

 南であっても、インドであることに変わりはないのだ。

 

 

 

 今回は漫然とした放浪旅行ではない。

 明確な意思を持っての来訪だった。

 1年後に開業予定のカレー店で、メイン料理に南インドのカレーを出してみたい、と考えていたのだ。

 

 

 日本にいるときは、趣味でインドカレーばかり作っていた。

 多くのレシピ本を見て研究していくうちに、南インドのカレーが自分に一番合う、と感じていた。

 職場の雇用調整で無職になった私は、これからの人生を好きだったカレーを仕事にして生きていこう、と思うようになった。

 

 

 日本のインド料理店でカレーを食べるとすれば、北インド系が中心となる。

 調べて見ると、南インド系のカレーは北海道でなかなか食べることの出来ない、ということがわかってきた。

 

 ヨーグルトやバターを多用するこってりした北の味付けと比較し、南のそれは随分あっさりした味付けである。

 汁気が多く、米とも相性がいい。

 ココナッツミルクを多用するが、酸味を加えるため非常に食べやすく、日本人の味覚によく合う。

 だが、こうした南のカレーはあまり知られていないため、一般の人はなかなか食べる機会がない。

 

 逆に私が、こうしたカレーを提供できれば・・・

 勝機を見出せるのではないか?

 そう考え、私はここ南インドまでやって来たのだ。

 

 

 

 最近では日本語で書かれた南インド料理のレシピ本は比較的簡単に入手できる。

 どのレシピを食べても美味しい、と感じた。

 しかし前回の南インド訪問時に食べた味の記憶と、微妙に違う。

 これらのレシピは、日本人の味覚に合わせるため調整しているのではないのか、と思った。

 

 まず本場の味を知る。

 知った上でカレーを作れば、それらの違いがわかるはずだ。

 

 食べるだけではなく、地元の人から伝統的な料理を習う。

 そして日本で入手が難しいレシピ本を集め、持ち帰る。

 この3点が主な旅行の目的だった。

 

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